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「外交敗北」重村 智計、講談社(2006/7)¥1,680 : 

外交敗北――日朝首脳会談の真実
重村 智計
講談社
売り上げランキング: 3910
おすすめ度の平均: 4.5
5 日朝共同宣言は、第二の日ソ中立条約である。
5 「工作」国家と対峙していることへの無自覚
4 北朝鮮相手に元々外交は無理だが...

【私の評価】★★★★☆


■著者紹介・・・重村 智計(しげむら としみつ)
 
 1945年、中国に生まれる。大学卒業後、1971年毎日新聞社入社。
 1979年から85年までソウル特派員。
 1989年から94年までワシントン特派員。
 帰国後、毎日新聞論説委員を経て、早稲田大学国際教養学部教授。


●北朝鮮問題となると必ずテレビに出てくる重村教授の著作ですが、
 テレビでは言えないことがこれだけあるのか!と驚きました。

 テレビのニュースを見るだけではわからない、
 北朝鮮問題の真実が明らかにされています。

 ・1990年までは、外交に権限も責任も持たない野党の政治家が、
  北朝鮮の手先としての役割を果たした。それ以降は、自民党の
  政治家が北朝鮮の利権にむらがった。(p246)


●まず、1990年までは、社会党を中心とした野党が、
 北朝鮮工作の手先として活動し、

 1990年代には、金丸信を中心とする自民党議員が、北朝鮮から
 資金提供を受け、動いていたことをほのめかしています。

 ・村山訪朝団の合意に従い、直ちに十万トンのコメが支援された。
  その後、さらに五十万トンのコメ支援をした。だが、拉致問題は
  まったく解決しなかった。五十万トンのコメは、一千億円を超える
  金額になる。コメ支援を決定したのは、当時の河野洋平外相であった。
  (p124)


●北朝鮮に反対の立場を取れば、自分の身が危険になり、
 北朝鮮に賛成する立場を取れば、利権にからめるならば、
 安易なほうを選択したくなる気持ちもわからないではありません。

 ・「・・・私はも限界ですよ。幹部に目を付けられていて、飛ばされそう
  ですよ。朝鮮総連が名指しでいやがらせをするから」
  (テレビ朝日で、長い間拉致問題を追いかけてきた芳沢茂雄記者)(p238)

●先の小泉首相の訪朝では、結果的に日本から一銭も資金を提供せずに
 一部の拉致被害者を取り戻すことができましたが、

 一歩間違えば、犯罪国家北朝鮮を経済支援することになるだけでなく、
 北朝鮮の核問題、偽札造り、麻薬犯罪を敵視する米国との関係が
 決定的に悪化した可能性があったようです。

 ・米国は北朝鮮を「悪の枢軸」「独裁国家」「核拡散の元凶」「犯罪国家」
  と明言している。日本が国交正常化に踏み切れば、「共通の敵」と
  「共通の価値観」は、一瞬にして失われる。・・・日本は独裁・犯罪
  国家を支援したことになる。(p221)


●米国と( 価値観 )を共有するグループにしてみれば、
 北朝鮮の核問題と犯罪行為、拉致問題が解決しなければ、
 資金を北朝鮮に出すことはできないと考えます。

 しかし、北朝鮮との( 関係 )を重視するグループは、
 できるだけ早く国交正常化し、資金協力をしたいと考えます。

 一般庶民の感情としては、犯罪国家に金をやるのは、
 おかしいと考えるのが普通ですが、そう考えないグループがあるのは、
 何らかの見返りがあるのかもしれません。

 ・安倍副長官と中山参与は、北朝鮮に戻すべきではないと主張した。
  アジア大洋州局長は、五人を北朝鮮に戻すよう主張した。五人の
  人生よりも、X氏との個人関係を重視したのである。・・・
  彼は「日朝間の信頼関係が崩れてしまう。日朝協議ができなくなる」
  と主張したという。(p156)


●日本が安倍首相を選んだということは、
 核問題、拉致問題が解決しなければ北朝鮮への経済協力はないという
 米国と同じ価値観を選択したということでしょう。

 拉致問題を利用して、日本から金を出させ、日米関係を崩壊させるという
 北朝鮮の工作は、もう一歩のところで失敗したことになるわけです。


●実は、小泉首相の訪朝は、国家としての綱渡り状態だったようです。

 米国との関係・・・北朝鮮の工作活動・・・マスコミ・・・
 拉致問題・・・外務省・・・官邸・・・国会議員。
 こうした国家外交の力学は、テレビでは全くわからないことです。

 ちょっとでも北朝鮮に興味のある人なら、読んでみてほしい一冊です。
 限りなく★5に近い★4つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・外交官は「ウソをつかない」ことが、原則である・・・
  日朝首脳会談の立役者とされたアジア大洋州局長は、取材記者の間で
  「平気でウソをつく外交官」と言われた。新聞記者がウソを責めると
  「外交官は、国益のためにウソをついてもかまわない」と言った、
  という逸話を残している。(p116)


 ・外務省高官の中には、「六ヶ国協議で拉致問題なんか、恥ずかしくて
  議論したくない。もっと大きな問題がある」と、取材記者に語る
  外交官もいる。ウソではない。(p228)


 ・日本の外交記事は政治部の記者が書いている。政治記者には、国際政治
  の現場で取材した経験はない。・・・日本の新聞は、国際事情を知る
  外信(外報)記者に外交記事を書かせない。だから、外交記事は
  政治家や官僚の宣伝記事になりかねない。・・・アメリカの新聞は、
  外交記事を海外特派員経験のある専門記者に書かせている。(p260)



▼引用は、この本からです。
外交敗北」重村 智計、講談社(2006/7)¥1,680
【私の評価】★★★★☆


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