「外交敗戦」手嶋 龍一 :75点, 手嶋龍一
●1990年8月、イラク軍がクウェート侵攻を開始しました。
それは、石油を中東に依存する国々にとって
中東の石油資源をイラクに握られるという許しがたい暴挙でした。
この本は、1991年の湾岸戦争において、
アメリカが、そして日本がどう動いたかを記録した
ドキュメントです。
・「大統領、つい先ほど、イラク軍がクウェートに侵攻しました」
・・・「特別声明」が用意され、大統領の決裁を得る。
スコウクロフトはブッシュに「長期戦になりますから」と仮眠を
とるよう促し、自分はアメリカ国内にあるイラクとクウェートの
資産を凍結するための措置にとりかかった。(p56)
●「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意した」国にとって、
クウェートが侵略されるというケースは想定外であり、
自衛隊を派兵することなど、法的にも政治的にも不可能でした。
日本の外交には、選択肢があまりにもなかったのです。
・アメリカ国民・・・やり場がない怒りをホワイトハウスに突きつけた。
「クウェートの王族のために、なぜわれわれの息子が砂漠で戦い、
血を流さなければならないのか」・・・アメリカの政府と議会は、
中東の石油に最も依存する日本に同じ憤懣を投げ返した。
「日本は、原油輸入の実に七割を中東に頼っており、・・・なぜ、
他の経済大国のために血を流さなければならないのか・・・」(p20)
●また、それに拍車をかけるように、
外務省、運輸省、大蔵省など関係省庁間の情報共有もうまくいかず、
輸送協力では、それぞれの担当者が努力するものの、
かならずしもアメリカの要望に的確に対応はできなかったようです。
・アメリカから輸送協力の要請を受けながら、日本政府は、法律の
規定がないこともあって、国としてこれに直接応じることが
できなかった。このため、官僚たちが個人のつてをたどって
内航船主に頼み込み、かろうじて日の丸輸送船を仕立て上げている。
海上自衛隊や海上保安庁の船こそ、こうした危機に国を背負って
赴くべきではないのか・・・(p158)
●湾岸戦争において日本は130億ドル(約1.5兆円)もの
資金協力をアメリカに行いましたが、
ここでも、外務省・大蔵省という組織がばらばらに交渉することで、
支払い条件が不明確であったりして、
アメリカからは感謝どころか、不満の声が出ていたようです。
・のちにクリントン政権で国防長官の要職につくことになる
レス・アスピン下院軍事委員長は、・・・日本を名指しで
非難した。「日本は特別な批判を受けてしかるべきだ。
もてる財力を思えば、不承不承、仕方なく財布を開いたと
言えないか。日本に拠出を呑ませるためにわれわれはどれほど
大変な思いをしたことか。ようやく金を出すことになったと
思ったら、もったいぶってなかなか渡そうとしない。(p377)
●そして、戦後には、130億ドルもの資金を投じながら、
クウェートにさえ感謝されない日本という結果が残りました。
・在ワシントンのクウェート大使館は・・・全米の有力紙に派手な
全面広告を掲載した。・・・<ありがとう、アメリカ。そして
グローバル・ファミリーの国々>・・・なぜかJAPANの文字は
見えない。(p400)
●湾岸戦争においては、それぞれ個人は、それぞれのポジションで
ベストを尽くしたのでしょう。
しかし、歴史としてこうした結果が残ったとすれば、
官邸、官僚組織が仕組みとして何かがおかしい
ということの証明なのかもしれません。
■この本で私が共感したところは次のとおりです。
・戦争は同盟の墓場だ・・・英国外交官にして詩人でもある友人が
語った言葉を私はいまも忘れない。・・・アメリカが持てる国力の
すべてを注ぎ込んで遂行する戦いに、同盟国日本が消極的な姿勢しか
見せないことに、アメリカの世論は苛立ち、議会やメディアでは日毎、
対日攻撃が棘々しさを増していた。(p412)
・その頃、イギリスのヒース元首相や日本の中曽根首相、ドイツの
ブラント元首相が相次いでバグダッドを訪問し、人質の解放を
求める動きに出ていたことに、アメリカは苛立っていた。
ホワイトハウスは「報道官声明」の形で、これらの人質救出外交は
「イラク側の術中にはまる恐れがある」と警告している。(p42)
・「一度目は騙すほうが悪い。が、二度騙されるのは騙される奴が悪い」
・・・フセインの次なる獲物は我がサウジアラビアではないのか・・・。
(p59)
・国連安保理は、多国籍軍によるイラクへの武力行使を事実上認めた
「決議678」を圧倒的多数で可決した。・・・反対はキューバと
イエメンの二カ国。中国は棄権した。・・・その二日後、ブッシュ
政権は、イエメン政府に対して七千万ドルの経済援助の中止を通告
した。(p75)
・松永には、軍靴に霞ヶ関外交を蹂躙されながら、毅然とした
抵抗を試みようとしなかった戦前の外務省への根深い批判があった。
・・・戦後、統帥権という名の権力機構は消滅したが、大蔵省は、
予算編成権を通じて、各省庁の頂点に立っていた。その強大な
支配力のゆえに、大蔵省の持つ政治権力は「財政統帥権」とすら
呼ばれることがある。(p395)
▼引用は、この本からです。
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ジャーナリズムの真骨頂
"敗戦"に思わず涙する本
手嶋氏の国籍はアメリカなのか ?
何故に☆2つなのか・・・【私の評価】★★★☆☆75点
■著者紹介・・・手嶋 龍一(てしま りゅういち)
1949年生まれ。NHK政治部記者として外交・安全保障を担当。
その後、ワシントン特派員、ハーバード大学国際問題研究所フェロー、
ボン支局長、ワシントン市局長。
2005年独立して外交ジャーナリスト・作家となる。
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