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2007年11月08日

「僕の見た「大日本帝国」」西牟田 靖、情報センター出版局 :西牟田靖 

僕の見た「大日本帝国」―教わらなかった歴史と出会う旅
【私の評価】★★★☆☆(73点)


■「大英帝国」という言葉があったように、
 「大日本帝国」という言葉がありました。

 大日本帝国とは、日本、台湾、朝鮮半島、サハリンの南半分、
 そして太平洋の島々からなる国家です。

 ・戦前のアジア太平洋地域の地図を見ると、日本の領土が現在より
  ずいぶん広いことに気がつく。朝鮮半島や台湾、サハリンの南半分、
  そして太平洋の赤道のあたりまでが日本領となっているのだ。(p17)


■著者の西牟田さんは、この「大日本帝国」の地図を見て、
 これらの日本領であった国々を旅してみようと決心しました。

 短期間の旅で、現地の実際の姿を知ることはできないでしょうが、
 現地に行かないよりは、より現実に近づけるはずです。


■南の島には、日本へのアメリカ侵攻を防ぐために、
 少ない武器で、玉砕していった人たちの名残がありました。

 日本の国のために自分の命を捧げた人たちがいた
 という事実を私たちは知らなくてはなりません。

 ・(ペリュリュー)神社には敵将ミニッツ提督の言葉の彫られた碑もあった。
  「この島を訪れるすべての国の人よ。この島を守った日本軍将兵が、
  いかに勇敢に祖国愛に燃えて戦い、玉砕したかを語り伝えよ」(p354)


■最近、沖縄で集団自決を日本軍が強制したという記述が
 教科書から削除されて問題になりましたが、
 気持ちはわからないではありませんが、
 日本軍がすべて悪いというのは、現実とは違うように感じました。

 ・そのころの日本人はアメリカ人など見たことがない人が多かったし、
  捕まったら殺されると思っていたのは仕方のないことなのかもしれない
  (その後終戦直前にソ連軍がなだれ込んできた満州では現実に地獄絵図が
  繰り広げられたのだ)。(p380)


■戦前は、日本の軍事力をちゃんと把握していませんでしたが、
 今は、愛国心の大切さをちゃんと把握していないように感じます。

 反日・愛国などということではなく、
 日本の歴史と、日本を考えるために良い本だと思いましたので、
 ★3つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・「特攻隊の人たちは精神が純粋で『お国のために』と思っていましたから、
  任務を疑問に思っている人は見かけませんでした」(台湾の鄭さん)


 ・満州から来た日本兵に、食いものと女持ってこい、と怒鳴られたこと
  もありましたよ。・・・日本は戦争に負けてしまったが、日本が戦った
  からこそアジアが列強から解放されたとう側面もあったんだよ。
  (韓国の張さん)(p172)


 ・グアムを除く島々は二十世紀の前半、南洋群島と呼ばれ、
  三十年ほどの間、日本に統治されていた。ドイツ領だった
  ミクロネシアを日本が無血占領したのは1914年(大正3年)、
  第一次大戦中のことだった。(p331)


▼引用は、この本からです。

僕の見た「大日本帝国」―教わらなかった歴史と出会う旅
西牟田 靖
情報センター出版局 (2005/02)
売り上げランキング: 35115
おすすめ度の平均: 4.0
2 ただの旅行記。
5 等身大のアジアがそこにある!
1 旅行記としては★5つ

【私の評価】★★★☆☆(73点)


■著者紹介・・・西牟田 靖(にしむた やすし)

 1970年生まれ。8か月会社員として勤め、
 地球一周の船旅に出て、ライターとなる。
 タリバン支配下のアフガニスタン侵入、
 空爆停止直後のユーゴスラビア突入など
 挑戦的な旅を続ける。

─────────────────

■関連書評■
a. 「台湾人と日本精神」蔡 焜燦、小学館
【私の評価】★★★★★

b. 「梅干と日本刀」樋口 清之、祥伝社
【私の評価】★★★★★


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2007年11月07日

「日本の食と農」神門 善久、NTT出版 :神門善久 

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)
【私の評価】★★★☆☆(70点)


■学者さんが日本の農業を分析すると、
 こうなるんだろうな、という一冊でした。

 まず、農業経営が非常に厳しいものであり、
 人一倍働かなくては成り立たないことはわかるようです。

 現状の農産物の流通では、農家に入るお金は、
 10%くらいでしかないのですから、
 農家は流通を含めてコスト削減努力が必要となります。

 ・現在の家庭の食費の大部分は加工や流通などにお金をかけている
  のであって、農産物そのものにはお金をかけていない。青果物の場合、
  小売価格の10~40%程度しか農家の手元には行かない。(p36)


■しかし、それでも農家が農家であり続ける理由は、
 農水省のばらまく補助金と、
 将来の農地転用による土地の売却期待であるというのが、
 神門(ごうど)さんの分析結果です。
 現実は、そうなのでしょう。


■また、農協と農水省にしても、
 現状維持と組織の維持に努力をするのみです。

 自殺した農水相がいましたが、
 農水省の利権には、ものすごいものがありそうです。

 ・正直に農地法を改正するのではなく、新たな制度を作って
  農地行政を複雑にし、外部からわかりにくくするのが農水省の
  知恵である。農水省のホンネは零細農家の保護である。(p161)


■「現状はよくない」ということはよくわかりましたが、

 今後、どうすべきかについては、最後の数ページで、
 外国人労働者の活用と、海外からの食品輸入の促進を
 あげています。

 サントリー学芸賞を受賞するくらい良い分析とは思いましたが、
 批判が主で、提案内容が弱かったので、★2つに近い、★3つとしました。


─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・JAの法令違反は偽装表示だけではない。最近では全農秋田による
  自主流通米の架空取引および横領事件が耳目を集めた・・・
  雪印食品が消滅してしまったのに比べて、相変わらず巨大組織で
  不祥事を続けるJA(p77)


 ・生産者との顔が見える関係とかいって宅急便を活用したような流通は、
  実は流通経費を高め、資源の浪費という環境破壊を招いている
  可能性がある。(p22)


 ・BSEであれ、環境ホルモンであれ、どの程度の有害性を持つのか、
  現在科学が正確に解明したわけではない。・・・日々われわれが
  “安心”して食べているものに、BESの比ではなく有害性が科学的に
  検出されているものが多々ある。(p48)


▼引用は、この本からです。

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)
神門 善久
NTT出版 (2006/06/24)
売り上げランキング: 72739
おすすめ度の平均: 5.0
5 農家・官僚・政治家の行動原理をわかりやすく解説している
5 農業関係者はどう評価する?

【私の評価】★★★☆☆(70点)


■著者紹介・・・神門 善久(ごうど よしひさ)

 1962年生まれ。
 1984年京都大学農学部卒。京都大学博士。
 現在、明治学院大学経済学部教授。

─────────────────

■関連書評■
a. 「夢の百姓「正しい野菜づくり」で大儲けした男」横森 正樹
【私の評価】★★★★★

b. 「ニンジンから宇宙へ」赤峰 勝人、なずな出版部
【私の評価】★★★★☆


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2007年11月06日

「天皇家の財布」森 暢平、新潮社 :森暢平 

天皇家の財布 (新潮新書)
【私の評価】★★☆☆☆(67点)


■去年、悠仁親王がご誕生したことで、
 女系天皇の議論は終わりになりましたが、

 天皇家のお金はどうなっているんだろう?という素朴な気持ちで、
 本書を読み始めました。


■内容としては、お金について調査したもので、
 天皇家のあり方、意味づけまで突っ込んでいないのが
 残念でしたが、

 たんたんと説明する皇室制度とお金の仕組みの中から、
 国会からの制限や、矛盾などがあり、
 戦後のGHQの圧力の幻影を見るような気がしました。

 ・天皇陛下から外国元首へのプレゼントは、公費(宮廷費)で用意する。
  ・・・国賓の場合、100万円単位の品が相手国に合わせて選ばれる。
  一方、外国元首から天皇陛下に贈られるプレゼントは、国有財産ではなく
  天皇家の私物になる。(p158)


■あくまで、皇室に係わるお金の話題だけですので、
 物足りない気持ちになりましたが、

 日本国民として天皇家をもっとしるために
 読んで損はない本だと思いました。★2つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・戦前、天皇家の土地、財産を都道府県に下賜したなごりが
  名前に残っている場合も少なくない。一例を挙げると、
  東京都の「上野動物園」の正式名称は「恩賜上野動物園」
  と言う。(p152)


 ・天皇家のお世話にあたる侍従職(定数78人)、東宮職(定数47人)
  で働く侍従、女官以下ほとんどの職員は国家公務員だが、
  これとは別に天皇家が私的に雇用している人たちがいる。
  「内廷職員」と呼ばれる25人である。(p68)


 ・宮廷費がオフィシャル(公的)マネーで、
  内延費、皇族費がプライベート(私的)マネーである。
  (p12)


▼引用は、この本からです。

天皇家の財布 (新潮新書)
森 暢平
新潮社 (2003/06)
売り上げランキング: 161797
おすすめ度の平均: 4.0
4 財布から見た生活の実態
4 「象徴」の生活
5 著者独自の視点

【私の評価】★★☆☆☆(67点)


■著者紹介・・・森 暢平(もり ようへい)

 1964年生まれ。毎日新聞社入社。
 社会部で宮内庁、警察庁を担当。
 2000年に渡米し、CNN日本語サイト編集長。
 現在は、琉球新報ワシントン駐在記者。

─────────────────

■関連書評■
a. 「帝王学―「貞観政要」の読み方」山本 七平、日本経済新聞社
【私の評価】★★★☆☆

b. 「幕末の三舟」松本 健一、講談社
【私の評価】★★☆☆☆


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2007年10月20日

「「法令遵守」が日本を滅ぼす」郷原 伸郎、新潮社 :郷原伸郎 

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書 197)
【私の評価】★★☆☆☆(69点)


■検察出身の著者が見た
 日本の法律とはどのようなものなのでしょうか。

 まず、著者が取り上げるのは、( 談合 )の取り締まりです。
 確かに談合は時代に合わないものです。

 けれども、談合にも良い面があったから行われてきたのであり、
 公共事業の発注の仕組みを残したままで
 談合だけを悪者にしても、安く良い公共事業が行われるとは限りません。

 ・マスコミの報道は、「談合は独禁法違反だから駄目だ」・・・
  という単純なものばかりです。・・・独禁法を遵守しているかどうか
  だけを絶対的な基準にする報道姿勢が、社会の風潮を法令遵守至上主義に
  してしまっているひとつの原因です。(p114)


■また、ライブドア事件、村上ファンド事件、
 耐震強度偽装事件などについても

 法律に違反したかどうかが問題となっているだけで、
 適性な決算、建物の安全性確保など
 事件の本質が報道されていない実体があるようです。


■法律が実体に合わなくなっているにもかかわらず、
 今もマスコミは法律さえ守っていれば良い、
 違法は悪、といった報道が行われています。

 その背景には、官庁が自分の責任を回避するために、
 記者クラブを通してマスコミをコントロールしている
 実態もあるようです。

 ・記者クラブの存在は、官庁などが公表する情報を、各マスコミが
  誤りなく報道することに役立っています。しかし、その反面、報道姿勢が
  取材対象である官庁や団体の意向に左右されがちです。
  捜査当局を例にあげれば、所属記者が批判的な報道をした場合には、
  有形無形の不利益を受けることも珍しくありません。(p119)


■検察官から見ても、現行の法律には
 問題が多いことがわかりました。

 法律遵守だけでなく、本来の法律の目的を達成する
 法律となることを祈って、★2つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・三菱自動車の2回目のリコール隠し事件が発覚し、まさにメディア
  ・スクラムによるバッシングが吹き荒れていたとき・・・ある記者が、
  「車の発火事故があったら警察に電話をして、『三菱ですか』
  と聞いて、他の会社だったら電話を切ります」と言っていました。
  (p122)


 ・株券の印刷が間に合わず、売り手が株券の受け渡しが
  できないことを見越して、百対一の株式分割を繰り返したのが
  今話題の企業である。(p59)


▼引用は、この本からです。

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書 197)
郷原 信郎
新潮社 (2007/01/16)
売り上げランキング: 4315
おすすめ度の平均: 4.5
4 法令と社会的要請との「ズレ」をくみとる
5 現代の経済法の親玉?
4 カタカナ英語を日本語にして納得してはいけない?

【私の評価】★★☆☆☆(69点)


■著者紹介・・・郷原 伸郎(ごうはら のぶお)

 1955年生まれ。東京地検特捜部、長野地検次席検事を経て、
 2005年から桐蔭横浜大学法科大学院教授、
 同コンプライアンス研究センター長。

─────────────────

■関連書評■
a. 「国家の罠」佐藤 優、新潮社
【私の評価】★★★★★

b. 「裁判のカラクリ」山口 宏、副島 隆彦、講談社
【私の評価】★★★★☆


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2007年10月19日

「清沢 洌(きよさわ きよし)」北岡 伸一、中央公論新社 :北岡伸一 

清沢洌―外交評論の運命 (中公新書)
【私の評価】★★☆☆☆(66点)


■日中戦争から、日米戦争に突入した昭和初期、
 清沢洌(きよさわ きよし)というジャーナリストが存在しました。

 清沢は移民としてアメリカにわたり邦字記者などをして10年ほど暮らし、
 帰国後、日本経済新聞社、朝日新聞社を経て、
 フリーの評論家として活躍しています。


■清沢のジャーナリストとしての評価が高いのは、
 戦争支持一色の日本国内で、満州事変、上海事変など
 その時代の流れに批判的な姿勢を崩さなかったことです。

 ・清沢は、満州事変に際しても従来の主張を変えることなく、これに的確な
  批判を加えたのである。・・・事変支持が最も明白であったのは新聞で
  あった。満州事変が勃発すると・・・日本の新聞は事変支持一色となった。
  (p103)


■また、太平洋戦争前に、日本がアメリカと戦争することに
 メリットがまったくないことを指摘していたのは、
 アメリカ移民としての10年の経験が現実を知っていたからでしょう。

 ・軍縮会議・・・清沢はがんらい、日本はアメリカと戦争することの
  出来ない国であり、また戦争する必要のない国だと考えていた。
  ・・・対米比率という発想自体が誤りであると清沢は言う。(p90)


■清沢は、行き過ぎた官僚主義が
 日本を亡ぼすとしています。

 これは、時代を超え、国家を超え、
 一つの真理でしょう。

 ・行き過ぎた統制は生産活動を阻害し、物資の自然な流通を妨げ、
  のみならず社会のモラルを破壊すると清沢は確信する・・・
  統制主義、官僚主義は日本を亡ぼす」と書いた。(p199)


■外交官は歴史に裁かれると聞いたことがありますが、
 マスコミも官僚も歴史に裁かれる点では同じだと感じました。

 清沢洌という存在から、
 国際情勢などの事実を達観する大切さを感じました。
 ★2つとします。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・清沢はしばしば国民の生活の問題を取り上げた。
  郵便局や鉄道の官僚主義・非能率・権威主義なども
  清沢のコラムの対象となった。(p42)


 ・清沢は、「私は一国の盛衰は結局その国民が多く生産するか
  せぬか、即ち労働するかせぬかによって決するものであることを
  信じるからであります」と述べて、中国の将来は明るいと論じた(p64)


 ・清沢から見れば会議の焦点が日米の比率になったこと自体が
  問題であった。・・・より大きな責任を負うべきは日本の新聞
  であった。各紙は声を揃えて、海軍とともに対米七割を強硬に
  主張していたからである(p91)


 ・(昭和9年)三月三十日の『報知新聞』の論説で清沢は、「我国において
  非常時が生んだ最も大きな産物は、官僚といふ行政的専門家が、
  無茶苦茶に威張り出したことである」と述べている。軍と新官僚を含めた
  「事務的官僚政治」が一貫性のある統一的国家意思の形勢を妨げている
  (p149)


 ・清沢は、旅行は人を賢くするというのは迷信で、むしろ
  狭い範囲の経験を絶対化する恐れがあり、読書時間を失っただけ、
  時勢に遅れたような気がすると告白している(p137)


▼引用は、この本からです。

清沢洌―外交評論の運命 (中公新書)
北岡 伸一
中央公論新社 (2004/07)
売り上げランキング: 7188
おすすめ度の平均: 4.0
4 アメリカとの協調を考えた国際均衡派
4 鋭い外交評論家。

【私の評価】★★☆☆☆(66点)


■著者紹介・・・北岡 伸一(きたおか しんいち)

 1948年生まれ。71年東京大学卒業。
 立教大学講師、助教授、教授を経て、
 97年より東京大学教授。
 2004年より国連代表部次席大使を務める。


─────────────────

■関連書評■
a. 「台湾人と日本精神」蔡 焜燦、小学館
【私の評価】★★★★★

b. 「日本の敗因」小室 直樹、講談社
【私の評価】★★★★☆


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2007年09月14日

「老兵は死なず」野中 広務、文藝春秋 : 

老兵は死なず―野中広務全回顧録 (文春文庫)
【私の評価】★★☆☆☆(68点)


■著者紹介・・・野中 広務(のなか ひろむ)

 1925年生まれ。51年園部町議に当選。
 園部町長、京都府議、副知事を歴任し、
 83年衆議院議員に初当選。
 98年、小渕政権の官房長官、2000年森政権下で自民党幹事長。
 2003年議員を引退。


─────────────────

■首相退陣でゆれる政界ですが、今日は、
 2003年に引退した野中 広務の回顧録をご紹介します。

 公共投資重視の政策には、同意できませんが、
 政治家の考え方、見方がよくわかる一冊だと思います。

 ・大蔵官僚は確かに優秀だが、まず第一に財政の健全化を考える。
  「まずは財政再建」が彼らの口ぐせだ。・・・経済が疲弊し、
  中小企業の倒産が相次ぎ、自殺者が続出しても、それでも彼らは
  財政再建という主張を変えようとしない(p36)


■特に、官房長官として支えた小渕恵三については、
 意外な素顔を知ることができるとともに、

 さらに、加藤紘一、田中真紀子、青木幹雄など、
 現役政治家についての野中氏の論評を見ると、
 はっきりいって浪花節的なものを感じました。

 ・「だめだっ。小渕恵三、あの激しい福田、中曽根の谷間で
  対抗してきて、政治家を目指して三十何年。ここで下がるんなら
  政治家をやめるっ。下がらないっ。」と言い切ったのだ。
  その激しい気迫に、私たちは息をのんだ。(p64)


■こうした人たちが政治家として永田町に集まり、
 役人と一緒に国を動かしているというのを知ると、

 ちょっとしたパワーバランスで、
 国の方針というものは変わってしまうのだなと感じました。

 政治の実際をちょっとだけ垣間見れる一冊ということで、
 ★2つとしました。

─────────────────

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・文部省は、「日の丸」「君が代」を教育現場に定着させることが、
  勤務評定につながるのだと管理職に圧力をかける。とくに広島は、
  被爆都市として戦後出発し、教職員組合への部落解放同盟の影響が
  強いことから、「日の丸」「君が代」をめぐっては厳しい対立があった。
  (p117)


 ・勇ましいことを言うのはたやすい。しかし、東京に核が打ち込まれる
  覚悟でそうした発言がなされているか、もういちど吟味してほしい。
  (p325)


 ・毎朝三十回の腹筋と朝晩の金槌を使った足裏たたきで、体にどこも
  悪いところはない。・・・気力と体力が充実している今だからこそ、
  あえて、現役を退く意味があるのだと考えた。(p11)


▼引用は、この本からです。

老兵は死なず―野中広務全回顧録 (文春文庫)
野中 広務
文藝春秋 (2005/12)
売り上げランキング: 5297
おすすめ度の平均: 5.0
5 もっと冷静に私たちも政治に参加しないと・・・
5 敵は小沢一郎から小泉純一郎に!
5 死んでも死にきれない政治家

老兵は死なず」野中 広務、文藝春秋(2005/12)¥660
【私の評価】★★☆☆☆(68点)


■関連書評■
a. 「お笑い創価学会信じる者は救われない」佐高 信、テリー伊藤
【私の評価】★★★☆☆

b. 「とてつもない日本」麻生 太郎、新潮社
【私の評価】★★★☆☆


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2006年11月08日

「この国のけじめ」藤原 正彦、文藝春秋 :68点, 藤原正彦 

この国のけじめ
この国のけじめ
posted with amazlet on 06.11.08
藤原 正彦
文藝春秋
売り上げランキング: 8313
おすすめ度の平均: 4.5
4 藤原先生ならでは
5 感銘を受けました
4 タイトルがちょっと微妙ですが…
【私の評価】★★☆☆☆68点


■著者紹介・・・藤原 正彦(こむろ まさひこ)

 1943年生まれ。新田次郎、藤原てい夫妻の次男。
 東京大学理学部卒、修士課程修了。
 現在、お茶の水女子大学理学部教授。


●作家の新田次郎の次男である藤原正彦教授のエッセー集です。

 藤原さんは米国でも研究されていましたので、
 日本の良い点、悪い点がよく見えるようです。


 ・戦略なき国家・・・「民主主義は最悪の制度だ。
  いままでのどんなものよりもましというだけだ」と言ったのは
  チャーチル元英国首相だが、近ごろこの言葉が身にしみる。(p92)


●藤原さんの基本的考え方は、
 日本固有の武士道精神の素晴らしさ、
 そして武士道精神が失われつつあるということへの警鐘です。

 欧米化の傾向にある現在の日本に
 危機感を持っておられるのでしょう。


 ・ほとんどの学生はアルバイトをしている。・・・アルバイトで
  多大な時間をつぶし、遊びでまた多大な時間をつぶす。二重の無駄
  である。学生は「社会勉強になる」などと言うが、私は「社会勉強
  など金輪際必要ない。学校を出たら否応なく一生社会勉強だ」
  と答える。(p135)


●学者だから好きなことが言えるということもあるでしょうが、
 正論というのも聞いておく価値があると思います。

 以前から「ゆとり教育」を批判していた
 藤原さんの正論に、★2つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・2003年4月から翌年3月にかけては25兆円という、対米黒字の
  二倍以上の米国国債を我が国は購入している。(p22)


 ・カナダ人学者がこう指摘した。「ロシア軍は、日本や日本軍に
  関して無知なまま戦い、太平洋艦隊とバルチック艦隊を失い、
  ついにはロマノフ王朝の崩壊につながる・・・(p48)


 ・北満州に残された開拓民二十七万名の運命は、苦難というより悲劇だった。
  野獣の如きソ連兵による虐殺、略奪、強姦は恐るべきものだった。・・・
  父親が泣きながらわが子そして妻を撃ち、最後に自らの命を絶つ、
  というような光景が随所に見られたという。(p182)


▼引用は、この本からです。
この国のけじめ」藤原 雅彦、文藝春秋(2006/4)¥1,250
【私の評価】★★☆☆☆68点


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「十六の話」司馬 遼太郎、中央公論社 : 

十六の話
十六の話
posted with amazlet on 06.09.06
司馬 遼太郎
中央公論社 (1997/01)
売り上げランキング: 68,524
おすすめ度の平均: 5
5 どの文章もすばらしい
5 いつ読んでも勉強になる本

【私の評価】★★☆☆☆


■著者紹介・・・司馬 遼太郎

 1923年生まれ。本名、福田 定一。学徒出陣のため大学卒業後、入隊。
 終戦後、いくつかの新聞社に勤務。
 1960年、『梟の城』で第42回直木賞を受賞。
 1961年に産経新聞社を退職し、作家生活に入る。
 「竜馬がゆく」「坂の上の雲」「翔ぶが如く」「燃えよ剣」など名著多数。
 1996年逝去。

司馬 遼太郎の16のエッセーをまとめた一冊です。
 「洪庵のたいまつ」を読みたくて購入しました。

 「洪庵」とは江戸時代、オランダ医学を学び、
 適塾という私塾を主宰した緒方洪庵です。

 適塾からは、大村益次郎、福沢諭吉などが輩出されています。

 ・江戸時代の習慣として、えらい学者は、ふつう、その自たくを
  塾にして、自分の学問を年わかい人々に伝えるのである。
  それが、社会に対する恩返しとされていた。
  (洪庵のたいまつ)(p376)

●この本で、意外に収穫だったのが、
 司馬 遼太郎がどのように歴史に興味をもったのかということです。

 戦地には赴きませんでしたが、日本軍兵士として徴兵された
 経験が大きかったようです。

 こんなバカなことをする日本人とは何かと歴史を追求しているうちに、
 歴史小説家となってしまったというわけです。

 ・戦い(第二次世界大戦)がおわったとき、当時二十二歳だった私は、
  ・・・こうも思ったのです。「むかしは、たとえば明治時代は、あるいは
  江戸時代は、さらにはそれ以前は、こんなバカなことをする国では
  なかったにちがいない」
  そのことを検証することに、半生をついやしました。
  (文学から見た日本歴史)(p16)

司馬 遼太郎の見る歴史観、日本への思いが伝わってくる一冊でした。
 日本の歴史と司馬 遼太郎に興味のある人にはお勧めです。
 ★2つとします。

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・こんにち、大小無数の国家が、自国民の利益という二十世の神話を
  守るために、怪物群のように地球上を横行しています。
  どこの国にとっても隣国は、悪魔に似ています。なぜなら、
  隣国は、自国にとって荀子の思想でいうところの“利己的欲望”しか
  もっていないからです。(訴えるべき相手がいないまま)(p310)


 ・ただ、さびしく思うことがある。
  私が持っていなくて、君たちだけが持っている大きなものがある。
  未来というものである。・・・
  二十一世紀をたっぷり見ることができるばかりか、そのかがやかしい
  にない手でもある。(二十一世紀に生きる君たちへ)(p384)

▼引用は、この本からです。
十六の話司馬 遼太郎、中央公論社(1997/1)¥900
【私の評価】★★☆☆☆
(Amazon: http://www.1bk.biz/906.html )←(詳細はこちらをクリック)



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2006年04月28日

「六千人の命のビザ」杉原 幸子、大正出版(2001/10) : 

新版 六千人の命のビザ
杉原 幸子
大正出版 (1994/03)
売り上げランキング: 42,427
おすすめ度の平均: 4.67
4 ぜひ、読んでもらいたい1冊!
5 人としていかに行動すべきか
5 必ず読んで欲しい本です!!


(私の評価:★★☆☆☆:時間とお金に余裕があればぜひ)


■著者紹介・・・杉原 幸子

 1913年生まれ。杉原千畝(すぎはらちうね)の妻。

●1940年7月、バルト三国の一つリトアニアの日本領事館を
 数百人のユダヤ人が取り囲みました。

 ・ドイツ在住のユダヤ人は国外に逃げるため、各国の大使館に
  ビザを求めて殺到しました。しかし、手を差しのべる大使館は
  ほとんどなかったのです。(p19)

●当時、ドイツとソ連との間で結ばれた独ソ不可侵条約には、
 ドイツとソ連によりポーランドを分割し、
 バルト三国をソ連へ併合させるという秘密の協定がありました。

 そして西ポーランドに入ったナチスは、
 苛烈なユダヤ人狩りを行い、
 それを逃れてユダヤ人が隣国リトアニアに逃げてきていたのです。

 ・ビザを待つ人群に父親の手を握る
  幼な子はいたく顔汚れをり(p40)

●その当時、リトアニアに領事として赴任していた杉原千畝は、
 ビザ発行を本省に打診します。
 しかし、ビザ発行は拒否されます。

 ・「内務省が大量の外国人が日本国内を通ることに治安上反対している。
  ビザ発行はならぬ」という回答に、夫の心は決まったようでした。
  「幸子、私は外務省に背いて、領事の権限でビザを出すことにする。
  いいだろう?」(p32)

●悩んだ杉原千畝は、外務省の命令に背き、ビザを発行することを
 決断します。

 そして、杉原千畝は日本に帰国すると、外務省の人員削減のなかで
 退職を余儀なくされました。

 ・「私のしたことは外交官として間違ったことだったかもしれない。
  しかし、私には頼ってきた何千人もの人を見殺しにすることは
  できなかった。・・・私の行為は歴史が審判してくれるだろう」
  私の顔を見ながら、しみじみとした声で話していました。(p177)

●自分が同じ立場であれば、そう行動できたかわかりません。

 そうした日本人がいたということを知ることのできる一冊として
 ★2つとしました。

■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・岡崎次官に「例の件によって責任を問われている。省としても
  かばい切れないのです」と言われたことを聞きました。(p150)


 ・「日本人は中国人に対してひどい扱いをしている。同じ人間だと
  思っていない。それが、がまんできなかったんだ」
  満州国外交部を辞めた理由を尋ねた私に、夫は言葉少なに
  そう語りました。(p34)


 ・ナチスに追われたユダヤ人を満州国に受け入れ、ロシア国境沿いに
  自治区を与えて同盟を組み、ロシアの南下政策を共同の力で防ぐ
  という極秘計画があったのです。(p45)

「六千人の命のビザ」杉原 幸子、大正出版(2001/10)¥1,575  
(私の評価:★★☆☆☆:時間とお金に余裕があればぜひ)


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2006年03月14日

「幕末の三舟」松本 健一、講談社(1996/10) : 

幕末の三舟―海舟・鉄舟・泥舟の生きかた
松本 健一
講談社 (1996/10)
売り上げランキング: 194,540

(私の評価:★★☆☆☆:時間とお金に余裕があればぜひ)


●著者紹介・・・松本 健一

 1946年生まれ。大学卒業後、評論家。日本思想史専攻。
 京都精華大学教授をへて、霊澤大学教授。著書多数。

●「幕末の三舟」といえば、
 海舟・勝麟太郎
 山岡鉄舟
 高橋泥舟(謙三郎、精一)です。


●勝海舟は、幕府陸軍総裁として、西郷隆盛が率いる東征軍と交渉し、
 江戸無血開城を実現した人。
 山岡鉄舟は、勝海舟が西郷隆盛と交渉のために送った手紙を届けた人。
 そのとき、高橋泥舟は、最後の将軍慶喜の護衛役でした。

 ・明治末年から昭和初年にかけて定まった三舟観は、・・・
  この三人が協力して、江戸を戦火から救い、内戦を回避して、
  外国(英仏)の介入をふせぎ、日本の独立を守った、
  というものであった。(p17)


●同じ舟という名を持ち、幕末で大きな役割を持った三人ですが、
 それぞれ個性を持っているのが興味深いところです。


●まず、勝海舟は、合理の人。
 現実を直視し、現実的な対応を考える人です。
 政策については天才と言えるでしょう。

 ・外交とか政治とかは、「万国公報」というような表面の「正理」
  がなければならないが、「正理」だけではダメだ。それを裏から
  支える「強さ」つまり力がなければ、「正理」など行われない。
  実行できない説というのは「空論」とならざるをえない(勝海舟)
  (p44)


●そして山岡鉄舟は、誠実の人。
 明治以後は明治天皇の侍従として忠義を尽くしたように、
 政治というより、自らの役割に徹する人です。


●最後に、高橋泥舟は、明治以後、表に出ず、
 人知れず隠匿の生活を送りました。

 ・(泥舟は)人間は最後はみんな髑髏(どくろ)になってしまうと
  考えれば、生きているときの栄華とか美貌などにとらわれるのは嫌だ。
  そんなものにとらわれる人間というものは愚かなものだといって、
  最後は髑髏の絵ばかり描いていたのだ(p148)


●三舟の人となりを読みながら、
 日本人というものを考えることができる良書ということで★2つとしました。


■この本で私が共感したところは次のとおりです。


 ・海舟は、忠義、忠義といっている人が国を滅ぼすのだ、
  と評しているが、じつは鉄舟も同じようなことを
  言っているのだ。(p139)


 ・江戸時代の処罰の仕方は、延々と牢に入れておくことによって
  病死させてしまうというやり方であった。(p106)

「幕末の三舟」松本 健一、講談社(1996/10)¥1,575
(私の評価:★★☆☆☆:時間とお金に余裕があればぜひ)


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